君がいない世界で生きるために
新城は言葉も出ないようだった。
「やっていないのだろう?」
私はもう一度、同じ質問をする。
新城は静かに首を縦に振った。
「……そうか」
新城が犯人ではないとわかっても、状況は変わらないどころか悪化した。
手がかりが一切なくなってしまった。
「お前、俺のこと信じるのか……?」
「信じるわけではない。頭に入れておくってだけさ。憶測と主観だけで新城を犯人にはしない」
まあ、出会う前に疑っていたことは言わないでおこう。
「新城は十分疑われた。苦しんだ。だからってわけじゃないが……信じるさ」
すると、新城は泣きそうな顔をしたが、また反対を向いてしまった。
「……ありがとう」
空に吸い込まれてしまいそうなほど小さな声だったが、それはちゃんと私の耳に届いた。
「感謝されるようなことはしていないさ。誰かに信じてもらえなきゃ、自分を見失う。自暴自棄になる。咲乃の死んだ原因を探るのに、新城にそうなられたら困るだけだよ」
といっても、もうすでに手遅れだろうが。
自暴自棄になっていたから、見境なく人に暴力を振るうっていたのだろうから。