君がいない世界で生きるために
「なにしてる?」
私の質問に、佑真は頭を抱えた。
「あのね、玲ちゃん。もう朝の八時なの、わかってる?」
「ああ……そうか……」
どうりでカーテンが閉まっているのに、明るく感じたわけだ。
「そうか、じゃないよ!もう学校に行く時間だよ!」
「着替えてくる」
佑真の隣を通り、自室に戻る。
ふと視線を勉強机に移し、咲乃の笑顔の写真を見つめる。
込み上げてくる涙を堪える。
ああ、今日は絶不調だ。
一日中咲乃を思い出す日だ。
なんて、咲乃のことを忘れた日など一日もないが。
「玲ちゃん!本当に遅刻するよ!」
ドアの外から急かされ、私は着替えずに部屋を出た。
それを見た佑真は、また驚いた顔を見せる。
「玲ちゃん、学校だって言ってるよね!?」
「悪いな、佑真。今日は学校を休む」
佑真は理由を察したのか、聞いてこなかった。
といっても、咲乃を理由を休むのは今日だけではないから、初めからバレていたような気もしなくはない。
「……僕に言われても、玲ちゃんの学校には伝わらないからね」
そうは言うが、佑真の通う男子校は私の通う学校からそう遠くはない。
伝えようと思えば伝えられる。