君がいない世界で生きるために
「……新城、やっぱり保健室に行ったほうがいい」
本人がいいと言っているから無視していようと思ったが、死にそうな顔をされるとそうも言っていられない。
だが、私に言われたことがやはり気に入らなかったらしく、新城は睨んできた。
「しつこいな。大丈夫だって言ってんだろ」
「うるさい、頑固者。咲乃が悲しむのは嫌なんだよ」
私は嫌がる新城を無理矢理立たせ、歩かせる。
手の怪我で大袈裟かと思ったが、出血が多かったらしく、新城はふらついていた。
「和多瀬……だっけ。どれだけ咲乃のこと好きなんだよ……」
「多分、新城が思っている以上だ。私は咲乃のためなら……」
私はそこまで言って、自分がなにを言おうとしてるのかと思った。
さすがにそこまで話す義理はない。
「と、とにかく、私の行動源は咲乃で」
「わかったって。それは俺も同じだしな」
私は新城を支えながら廊下を歩くが、授業中にも関わらず、結構な数の生徒が廊下にいた。
新城がいるということで、自然と道は出来たが、避けていく生徒は開いた口が塞がらないというような感じだった。
「新城がチビに支えられてるぞ」
「まさか、あのチビ勝ったのか……?」