君がいない世界で生きるために
噂が独り歩きしてるではないか。
転校初日に学校のトップと勘違いされるとは……新城か。
「行動しやすくなってよかったな」
私に聞こえた噂は、新城にも聞こえていたらしい。
こんなときでも新城は、意地の悪そうな笑みを浮かべている。
「お前のせいだぞ、新城」
そう言いながら、少し新城に案内してもらって、保健室に着いた。
「新城君……?」
保健室にいた女の先生は驚いていた。
そんなに新城が誰かに支えられているところが信じられないのだろうか。
「先生、新城は怪我をしていて、手当てをお願いできますか」
「え、ええ……」
先生は動揺を隠し切れていなかったが、新城の手当てをしてくれた。
「出血のわりに傷が浅そうね。でも、早めに病院に行くこと。いい?」
新城は頷かなかった。
病院嫌いかよ。
新城が手当てを受けている間は暇で、傷口を見たいとも思わなかった私は、ドア付近にあった椅子に座る。
手当てが終わるまで、私たちは口を開かなかった。
先生も気を使ったのか、なにも言わなかった。
そして手当てが終わろうかというとき、一人の生徒が保健室に駆け込んできた。