君がいない世界で生きるために
私は新城のほうを見れなくて、棚を見つめて頷く。
「ならよかった」
「え……」
怒られると思っていた手前、こんな反応をされると戸惑ってしまう。
「お前、なんで俺が咲乃が階段から転落したって知ってるか、疑問に思わなかったのか?」
言われてみると、不思議だ。
誰も知らなかったことを、なぜ新城が……
「やっぱり新城が落とした……」
「なんでそうなるんだよ」
それは冗談として。
普通に考えれば……
「咲乃が落ちるところを見ていた?」
「そういうことだ。まあ、見ていたのは俺の仲間だけどな」
手に持っていた道具を元あった場所に置き、振り向く。
「見ていて、助けなかったのか?」
「助けられなかったんだとよ」
新城は包帯に巻かれた右手を強く握りしめている。
私はかける言葉が出てこない。
「……悪い」
私が戸惑っていることに気付いたのか、新城は小さくこぼした。
「それも含めて、今日、そいつに話を聞きに行かないか?」
「それはいいが……本当に協力してくれるとは」
「咲乃を殺した誰かがいるかもしれないというなら、気にならないわけがないからな」
そう言う新城は、どこか不安そうに見えた。