君がいない世界で生きるために
一瞬だけ見えた新城の横顔は、微笑んでいるように見えた。
「構わねえよ。バカにされ、喧嘩を売られても負ける気がしねえ」
……だろうな。
変な心配をした。
それから私たちは黙って歩いた。
時計を見ていなかったためどれだけ歩いたかはわからないが、結構歩いて新城が足を止めた。
そこは倉庫だった。
出入り口のところには二人ほど立っている。
「行かないのか?」
新城は立ち尽くしていた。
すると、見張り役であろう人が、私たちに気付いた。
一人が倉庫の中に向かって叫ぶ。
「裏切り者が来ました!」
頭が追いつかなかった。
元総長が、どうして裏切り者になる。
「おい、新城。どういうことだ?」
「俺は……咲乃が死んで、見張りを頼んでいた奴を責めた。それで……仲間割れというか……追放された」
その言葉で、保健室で見た新城の不安そうな表情に納得した。
新城は話を聞けるかどうかが不安だったらしい。
「どうにかして聞けるようにしてくれないか」
「……他人事のように言いやがって」
「他人事さ。私には仲間割れのことは関係ない。とにかく、咲乃についての情報が手に入ればいい」