君がいない世界で生きるために
「和多瀬……?」
私の名前を呼んだ新城は、今にも倒れそうだった。
私は拳銃をその場に捨て、真ん中でふらつく新城に向かって足を踏み出す。
「くだらない喧嘩は後にしてくれるか」
「……んだと、野郎」
髪を赤く染めた長身の男が私の前に立つ。
「後にしろって言ったのさ。あんたたちの仲間割れに付き合ってる暇はないのだよ」
すると、挑発しすぎたのか、男は私に向けて拳を振り下ろした。
だが、それは私には届かなかった。
新城が止めてくれた。
「……隼人、どういうつもりでここに来た。お前は仲間を疑い、責めたんだぞ?追放されたんだぞ?それなのに、よく顔出せたな」
しかし、新城はなにも言わない。
今この話を続けても、仕方がないだろう。
「咲乃について話を聞きに来た」
私は単刀直入に言った。
倉庫内に動揺が走った。
「咲乃、だと……?」
「白雪咲乃。知っているだろう?」
しかしざわめきが大きくなるだけで、誰も話してくれなかった。
「和多瀬玲さん、ですね?」
諦めて帰ろうとしたとき、どこからか真面目そうな声が聞こえてきた。
奥から眼鏡をかけた黒髪が歩いてくる。