君がいない世界で生きるために
「その制服はそこの裏切り者と同じ制服ですね。男子校に通われているということですか?女性なのに」
凍りつくような微笑みに、私は固まって言葉が出てこなかった。
「あなたのことはよく咲乃さんから聞いていました。初めて聞いた日には裏切り者が嫉妬していましたが。そこで咲乃さんは和多瀬玲さんをお姉ちゃんのようだ、と言っていました」
「……それで?」
否定するところなどなく、それを言うのが精一杯だった。
「裏切り者などと手を組んで、なにをしに来たんだ」
仮面が外れたかのように、睨まれた。
なぜかこっちのほうが接しやすいと思う私は、どこかズレているのかもしれない。
「新城に、咲乃が階段から落ちるところを見ていた人間がいる、と聞いた。その人間に話を聞きに来た」
黒髪は右手の中指で眼鏡を上げる。
その仕草が妙に腹立たしい。
ついでに、バカにするように笑っているから、さらに苛立つ。
すると、赤髪が声を上げて笑った。
「残念だったな!影山は族を抜けたよ。裏切り者に嫌というほど責められ、逃げたんだ。ここには、影山の連絡先を知る者はいない。諦めて帰れ、バーカ」