君がいない世界で生きるために
「奥で手当てしろ。話はそれからだ」
赤髪は新城に肩を貸し、奥にある部屋に向かった。
「和多瀬さんもよかったら」
また仮面を被った黒髪は、私をエスコートするようにドアに向けて手を出した。
「断る」
「は?」
黒髪は間抜けな声を出した。
「仲間割れも仲直りも、私には関係ない。どうでもいい」
「まあ、そう言わずに。話の流れで咲乃さんのことを話すかもしれませんよ」
そこまでして私に同席させたい理由はわからないが、咲乃の話と言われて、断るはずがなかった。
上手く乗せられたのだろうが、そんなことは気にしない。
部屋には二人がけのソファが机を挟んで向かい合うように置いてあり、一人用のソファがその間にあった。
先に部屋に入っていた赤髪が、二人がけのソファで新城の手当てをしていた。
私は一人がけのソファに、黒髪は向かいのソファに座る。
「……隼人がここに来たのは、そこの野郎……じゃなかった、女のせいか?」
赤髪は少し失礼だと思う。
ではなくて、新城の傷口を消毒しながら聞いた。
「……そうだよ」
「そうか」
会話が途切れた。
保健室での私と新城の会話みたいだ。