君がいない世界で生きるために
しかしこのまま無言でいられても困る。
「さっさと話し合いを進めてくれるか」
「和多瀬さんが仕切ってくれませんか?」
なにを言い出す、黒髪。
……まさか。
「初めからそのつもりで私を呼んだのか」
黒髪はなにも言わずに微笑む。
やはり乗せられたらしい。
私は自分自身に呆れ、ため息が出る。
私が仕切る、か……
「では、影山にはどこに行けば会える?」
赤髪と黒髪は呆然としていた。
新城は声を殺して笑っている。
「お前、本当に咲乃以外のことはどうでもいいんだな」
否定はしない。
「僕たちの仲を元に戻せたら教えてあげますよ」
黒髪はまた眼鏡を上げる。
こう言うってことは、もしかして。
「……影山の連絡先を知っているのだな?」
「お姉様は存外聡明なお方だ」
「お前は策士だな」
私たちは睨み合う。
といっても、私が一方的に睨んでいるだけで、黒髪は変わらず笑みを浮かべている。
「お前らが喧嘩してどうすんだよ」
新城に冷静に突っ込まれた。
別に喧嘩をしているつもりはないのだが、傍から見ればそうなのだろう。