君がいない世界で生きるために
影山の部屋に入るが、私と新城はドアの前から動けなかった。
「……適当に座ってください」
先に床に座った影山に言われるが、新城も動かなかった。
すると、後ろのドアが開いた。
「まだ座ってなかったの?」
三つのコップとロールケーキの乗った小皿を乗せたお盆を持って、母親が入ってきた。
さすがに立ち続けることができなくなった私たちは、影山とローテーブルを囲むように座った。
「ごゆっくり」
お茶と皿を置いた母親は、すぐに部屋を出て行った。
影山はお茶に手を伸ばすが、私たちは妙な緊張感から、まったく動けなかった。
「……なにをしに来たんですか」
しびれを切らした影山が先に言った。
だけど新城が話せるような雰囲気ではなかった。
「君が咲乃の最期を見たと聞いた。今日はそのときの話を聞きに来た」
「……新城さんも?」
新城は首を縦に振る。
「あのときは、本当に悪いことはをした。和多瀬……こいつに言われて咲乃が死んだ現実と向き合おうと思ったんだ」
新城の言葉を聞いても、影山はなにも話さなかった。
「影山、もしよかったらお前の思いを聞かせてくれないか」