君がいない世界で生きるために





「れーいー!」



部屋の外から聞こえてきた母さんの叫び声で目が覚めた。


まだカーテンを開けていなかったらしく、部屋は薄暗いままだった。



とりあえずカーテンを開け、部屋を出る。


母さんはリビングにあるソファに寝転がってくつろいでいた。



「……おかえり」



寝起きのためか、声が低かった。



「あんた、寝てたの?相変わらず、すごい寝癖」

「……眠かったんで」



キッチンに行き、コップにお茶を注ぐ。



「私のもー」



食器棚からもう一つコップを取り出す。



「それで、なんで呼んだの?」

「マッサージしてもらおうと思って」



それでソファでうつ伏せになっていたのか。



ソファのそばにあるローテーブルにコップを二つ置き、マッサージを始める。



「玲ったら、勝手に休むこと増えたよねー。前まではなにがあっても学校に行ってたのに」



……それは咲乃に会えるから。



「ま、少しくらい休んでもいいけど、休みすぎには気をつけなよ」



すると、母さんは眠りについた。



自由な人だな。


まあ、助かるけどさ。



起こさないようにそっとその場を離れ、時間を確認する。


時刻は十一時になろうとしていた。
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