君がいない世界で生きるために
「お前だよ」
即答だった。
心なしか睨まれているような気がした。
「咲乃は和多瀬が自分を理由に行動することをわかっていたんだよ」
だからと言って、わざわざ危険が増すようなことはしてほしくなかったが。
「お前、咲乃が彼氏以外の男と歩いていたらどうしてた」
「まずは話を聞くさ。その説明次第でどうしていたかはわからないが」
新城はやはりと言わんばかりにため息をついた。
「咲乃はそれをわかっていたから、護衛はなしにしてくれって言ってきたんだよ。でも、さすがにそれはできなかったから、こっそり見守ることにしたんだ」
私は納得し、それ以上は聞かなかった。
「遮って悪かった。話を続けてくれ」
影山は戸惑いながら、頷いてくれた。
「あの日は、敵の一人も咲乃さんのあとをつけていて……さらに前に、もう一人いました。でも、それは暗くて誰かわからなかった。二つの影があったから、いつもより注意して見ていたんです」
影山はゆっくりと話していく。
「歩道橋を登りきったところで、敵よりも先に、誰かわからない影が咲乃さんに話しかけて……」
「その時点で咲乃を守りに行かなかったのか?」