君がいない世界で生きるために
むしろ、楽しくないと思うはずだろう。
「和多瀬に言われてわかったんだよ。俺はガキみたいなことをしてたんだなって。でも、あいつらはわかってくれねえし」
……そんなことを言った覚えはない。
私はただ、佑真を殴りたくなかっただけだ。
いや、佑真でなくても嫌だっただろう。
人を殴るなど、無意味なこと。
咲乃を守るためとなってくると、話は別だがな。
私は妙に心を入れ替えた雨宮を無視し、弁当を広げる。
「和多瀬」
私の昼食時間を邪魔したのは、新城。
新城は目の前に立っていた。
教室の隅で変な噂がされているが、今は無視だ。
「ちょっといいか」
新城は詳しくは言わなかったが、それがここでは言えないことだとすぐにわかった。
「雨宮、少し席を外してくれるか」
雨宮はすぐに席を離れてくれ、そこに新城が座る。
「これからは影山が話していた人影について探っていくでいいよな?」
「ああ、そのつもりだ」
むしろ、それ以外にないとも思うが、一応の確認だろう。
「心当たりはあるか?」
咲乃のあとをつけ、話しかけるような人物……
「ないな」