君がいない世界で生きるために
台所に立ち、チャーハンを作る。
「んん……いい匂い……」
完成したと同時に、母さんが起き上がった。
数分しか寝てない。
なんて、空腹には敵わなかっただけか。
「……母さんも食べる?」
「食べるー」
起き上がって食卓につく母さんは、まるで子供のように見えた。
母さんの前にチャーハンとスプーンを置くと、自分のチャーハンを作り始める。
「……玲、本当に咲乃ちゃんが好きだったんだね」
母さんは一口食べたのか、スプーンをくわえていた。
「どうした、急に」
「咲乃ちゃんが亡くなって、その傷がまだ癒えてないみたいだし……玲は咲乃ちゃんのこと、すごく可愛がってたし」
「あれは美少女だからな」
手元に集中しながら、会話を続ける。
しかし和気あいあいという空気はなく、淡々と会話が続いていた。
「……まだ、納得してないの?」
「ああ、していないよ。咲乃が事故で死んだというのはいいが、交通事故だったとは聞いていない。どんな事故だったのか、どうして事故に巻き込まれたのか……気にならないほうがおかしい」
出来上がったチャーハンを皿に盛り付け、母さんの前に置く。