君がいない世界で生きるために

私たちはどこに向かうわけでもなく、校舎内を歩く。



「それで?男装することと白雪、どう関係あるんだ?」



前を歩く先生は、振り向きながら聞いてきた。



……なぜわかった。



それが顔に出ていたのか、先生は笑い出す。



「おいおい、舐めんなよ?一年お前と白雪を見てきたんだ。和多瀬が行動する理由は大体白雪が関係してることくらい、すぐにわかる」



さすが先生だ。


仲がいいだけではなかったか。



私は歩くスピードを落とし、立ち止まった。


私が止まったことに気付かず歩き続ける先生の背中に投げかける。



「先生、私が咲乃の死んだ原因を聞いたこと、覚えてます?」



先生も立ち止まり、振り向く。


深刻な表情に私もつられてしまう。



「それを探るために、男装してるのか?」



私はゆっくりと首を縦に振る。



「咲乃には彼氏がいて、その彼氏が男子校に通っていた。私は、彼氏がなにかを知っていると思ったから、接触した」

「……だけどここに来たってことは、なにも知らなかったってことか」



また頷く。



「先生、咲乃と仲が良かった生徒を教えてもらえませんか」



先生は腕を組んで考え込む。
< 60 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop