君がいない世界で生きるために
先生が躊躇うこともわかる。
だが、駄目だと言われても素直に引き下がることなどできない。
「教えたとして、どうするつもりだ?」
「話を聞くだけです」
嘘はついていない。
その話次第で、どうするかが決まるだけ。
「……わかった。俺が同席することを条件とする」
私はつい、顔を顰めてしまった。
「なんだよ、その不満そうな顔は。和多瀬にとっていい話じゃない可能性もあるだろ?そうなると、お前はなにをするかわからない」
……否定ができない。
自分でもそう思ったところだ。
「だから、俺が同席する。いいか?」
断れば、話は聞けない。
そうなると、条件を呑むしかなかった。
「……意地が悪いな」
「生徒思いと言ってくれ」
先生の表情が柔らかくなった。
この話は終わりだと言わんばかりに微笑む。
「今日は会えないのか?」
「帰ってるかもしれないからなあ。明日また放課後に来れるか?」
「もちろん」
「じゃあ、明日」
先生はそう言いながら、私の頭に手を置いた。
「みんなを悲しませるようなことだけはするなよ」
どうしてそのようなことを言うのか聞こうとしたが、用ができたと言われ、先生は職員室に戻ってしまった。