君がいない世界で生きるために

それを聞いてショートカットの子はどこか安心したような顔を見せたと思うと、逆に不安そうな表情をした。



しかし、二人の中ではそういう認識だったのか。



「和多瀬玲です。咲乃の姉ではなく、幼馴染です」

「佐倉真央です」

「……安達莉奈です」



戸惑いながらも、ショートカットの子、二つ結びの子の順で名前を教えてくれた。



そして二人には座っていた椅子を後ろに向けて座ってもらい、私はその後ろに座った。


先生は一つ開けて隣に座った。



「佐倉さんと安達さんは咲乃の友達だよね?」



二人の不安心を煽ってしまわないように、話し方に気をつける。



それでも二人は不安そうに頷く。



「咲乃の学校生活のこと、教えてもらえないかな?」



視界の端にいる先生がなにか言いたそうにしているが、今は知らない。


先生は私が単刀直入に言うと思っていたのだろう。



たしかに回りくどいことは嫌いだが、この二人がなにも知らないとなってしまうと、手がかりがなくなってしまう。


すぐに事実を知って話を終わらせてしまうよりも生徒目線での情報が欲しかった。



先に要件を言ってしまうと、警戒されてなにも聞き出せない可能性もあった。
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