君がいない世界で生きるために

私は二人が口を開くのを待つ。



「咲乃ちゃんは……いじめられていたんです」



先に話し始めてくれた安達さんの言葉に怒りが込み上げてきたが、必死に堪える。


安達さんの声が震えているから、一生懸命に話してくれているのだろう。



そして佐倉さんもそれに気付いたのか、安達さんの手に自分の手を重ねた。



安達さんの代わりに佐倉さんが話してくれる。



「咲乃は和多瀬先輩といつも一緒にいただけでも周りによく思われてなかったんです。でも、極めつけは相田先輩です」

「佑真が?」



どうして佑真が出てくるのかわからなかった。



私のことに関しては、確かに一緒にいすぎたし、それで咲乃のイメージが悪くなってしまったのはわかる。


だが、佑真は違う。



佑真が学校で咲乃といたことはないはずだ。



「去年のクラスの中心人物が、相田先輩のことが好きだったんです。だから、咲乃と先輩が二人でいたところを見たとか言って、咲乃をいじめるように……」



佐倉さんは悔しそうに言う。



「私たちは、咲乃をいじめることなんてできなかった。でも、そうしたら私たちまで無視されるようになって」



典型的なパターンだった。


そのいじめっ子は相当な自信家か、自己中心的な子なのだろう。
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