君がいない世界で生きるために
「でも、玲なんかに調べられないでしょ」
口に運ぼうとした手が止まった。
「……咲乃が付き合っていた暴走族を見つけて、話を聞く。佑真には無理を言って、不良校に通ってもらっている。私はその不良校に行けるチャンスを、狙っている」
「そこに元彼君がいないかもしれないのに?」
「そのときはそのときだ。この街から出ていないのなら、佑真の高校に通っている可能性は高いだろう?」
私の言葉に納得してくれたのか、母さんはそれ以上は言わなかった。
「……もしかして玲、男子校に通おうとしてる?」
その質問に、思わず笑みがこぼれた。
「よくわかったな。そのまさかだ」
「そこまでする必要、あるの?」
「どうだろうな。ただ、通うとすればそうだろうと思う人物がいてからだ。学校も違うのに、暴走族のトップには近付けない。ましてや、女である私なんか」
すると、母さんの目が輝いた。
なにかよからぬことでも思いついたか。
「私、なにかで読んだことある!暴走族には、姫っていうポジションがあるの!たしか、幹部?の大切な女の子が姫になれるんだって!玲、それはどう!?」
「落ち着け、母さん。そのポジションは咲乃のものだ。私は絶対にそのポジションには行かない」