君がいない世界で生きるために

私は咲乃と佑真が話しているところを見たことがなかったから妙だとは思っていたが……



「咲乃ちゃんの恋人が暴走族のトップだと知ったときは、僕は玲ちゃんが危険な目に遭うんじゃないかって思った」

「和多瀬が?無関係なのに」

「咲乃ちゃんと一緒にいるところを見られたら、巻き込まれる可能性は十分あるじゃないですか」



しみ込んだ上下関係ゆえに、佑真は新城に対して敬語を使った。



……そんなことはどうでもいいのだよ。



「だから、玲ちゃんが大切なら近寄らないでほしいって……」



佑真がそう言っていても、私が咲乃のところに行っていたし、離さなかった。


咲乃が嫌がっている様子だって、なかった。



咲乃は、同級生と佑真からの嫌がらせに耐えていたのか……?


それを誰にも相談せずに、一人で抱えていたのか……?



そう思うと、一筋の涙が頬を伝った。



「玲ちゃん、どうして泣いてるの……」



佑真は悲しそうな目つきをする。



頭が追い付かなかった。


私からしてみれば、どうして佑真がそんな言葉を私にかけるのかわからなかった。



「……なんでもない。話を続けてくれ」



流れた涙を拭う。
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