君がいない世界で生きるために
「咲乃ちゃんが死んだ日、僕はまた咲乃ちゃんに言ったけど、今度はきっぱりと言われたんだ。玲ちゃんも新城さんも大切だから、どっちかなんて選べないって」
咲乃らしい選択だと思った。
しかし、目の前の佑真はそのときのことを思い出しているのか、どこか怒っているように見える。
「咲乃ちゃんは自分のことしか考えていなかった。玲ちゃんが事件に巻き込まれてもいいと思っているみたいだった。咲乃ちゃんなんて、玲ちゃんに嫌われてしまえばよかった」
私の知っている佑真ではなかった。
憎しみのこもった声に、言葉が出てこない。
「お前……それ、咲乃に言ったのか……?」
新城も驚いているようだった。
怒りよりも驚きが勝ったらしい。
佑真は戸惑いながらも頷く。
「歩道橋を上る途中で……だけど、僕は足を滑らせちゃって……」
「え、お前が?咲乃じゃなくて?」
私が聞くよりも先に、新城が聞いた。
「はい……咲乃ちゃんは、僕を助けてくれたんです。僕のことなんて嫌いなはずなのに……どうしてって言ったら、玲ちゃんの大切な人だからって……」
涙腺が崩壊しないわけがなかった。
どこまでも優しい咲乃を愛しく思う。