君がいない世界で生きるために
「どうして私が自殺をするのだ」
「お前、原因となった人物を殺そうと思ってたんじゃ……」
そう言われるのも無理ないか。
私はなぜか笑みがこぼれた。
「自殺はしないし、誰も殺さないさ」
「そうなのか?」
新城はそう言いながらも、どこか安心しているように見えた。
私は母さんにも、中村先生にも言われたのだ。
自ら命を絶つようなことも、他人の命を奪ってしまうこともしない。
皆誰かを大切に思い、失いたくないと思っているのだから。
この世に存在するすべての命を大切にできるほど、私はできた人間ではない。
それでも、知り合った者の命だけは失わずにすむようにしたいと思う。
「お前、これからどうするんだ?」
「というと?」
「解決したのに、男子校に通い続けるのか?それに、相田も……」
新城は語尾を濁した。
「ゆっくり考えるさ」
「ただいまー!」
すると、今までの重い空気を完全に壊す母さんが帰って来た。
「あ、玲!帰ってるならおかえりくらい……誰!?」
部屋に入って来た母さんはいつも通りのテンションで、逆に落ち着いた。
ようやく心に余裕ができた私は、新城にお茶を出すことにした。