君がいない世界で生きるために
……そういうことは早めに言ってくれないか。
しかしそういう理由でもなければ、普通は許されないよな。
いや、確認のためと言うが、私は男装したが。
「それで、どうする?今の学校に通う?私としては通ってくれると嬉しいなあ」
なぜ嬉しいのか。
それを聞いたとしても、どうせつまらない理由なのだろう。
「……わかった、通うよ」
「了解。じゃ、晩ご飯の準備よろしく!彼の分もね」
笑顔で押し付けないでもらえるか。
なんて思いながら、台所に立つ。
「あの、俺……」
「帰るなんて言わないでね?まだ話聞いてないんだから!」
どこまでも空気を壊してくれる母さんのおかげで、あまり暗い気分にならずに済んだ。
母さんのおかげで気分がマシになっても、聞いた事実が消えるわけではない。
咲乃を失った痛みと同等な、佑真を失った痛みも消えるわけではない。
だが、それを一生引きずっていくわけにはいかない。
その痛みを乗り越えなけばいけないと思う。
だから、母さんに振り回されるのも案外悪くないかもしれない。
晩ご飯を食べてすぐ、新城は帰ることになった。
「付き合わせて悪かったな」
「なんだかんだ楽しかったし、いいよ」
靴を履き終えた新城は笑顔で振り向く。
「また学校でな」
新城はそう言って帰っていった。
こうして、咲乃の死の真相は明らかになった。