君がいない世界で生きるために
母さんは頬を膨らませる。
実年齢と精神年齢が一致していないように思うが、言わないでおこう。
「元彼君を見つけても、咲乃ちゃんが死んだ理由がわかっても、その原因となった人を殺したりしないでね」
「努力はするよ」
私はやっと一口食べた。
黙々と食べ進めていたからか、母さんがそれ以上なにかを言ってくることはなかった。
「玲」
空になった皿を洗っていたら、遅れて食べ終えた母さんが皿を持って私の名前を呼んだ。
またさっきみたいにふざけたことを言うのかと思ったが、真剣な顔をしていた。
「一人で抱え込むようなことだけはしないでよ?男子校に通うってだけでも変なことをしようとしてるんだから」
「……母親らしくしてくれるのはありがたいが、黙って皿を置くのはいかがなものかと」
「てへ?」
……本当に、精神年齢と実年齢が一致していないな。
「ま、玲が咲乃ちゃんを大切に思ってるみたいに、私もあの人も玲のこと大切なんだから。危険なことには首突っ込まないようにしてよ?」
私は手を止めてしまった。
私が咲乃を思うように、と言われたら無茶が出来なくなるではないか。