君がいない世界で生きるために

すると、母さんは私の頭に手を置いた。



「わかってくれたみたいで、なにより」



満足したのか、母さんはソファに戻った。



皿を洗い終えると、部屋に戻る。


佑真が帰ってくるまで、あと四時間くらい。



「……寝ようか」



いや、待てよ……



遅く起きて、うたた寝して、また寝る……


さすがに寝すぎだろう。



「……散歩しよう」



ジーパンとパーカーに着替え、ポケットにスマホと小銭入れを入れて、部屋を出る。


母さんはソファで眠っている。



「行ってきます」



起こさない程度の声で言い、家を出た。



行きたい場所があるわけでもなく出てきたが……


せっかく咲乃のことを思い出したんだ。



咲乃との思い出がたくさんある場所、中学校にでも行ってみよう。



半年前まで通っていた学校への道は、まだ覚えていたらしい。


学校に着くと、グラウンドで遊ぶ生徒が何人かいたみたいで、賑やかだった。



「和多瀬?」



そんな賑やかなグラウンドを眺めていたら、名前を呼ばれた。


振り向くと、そこには見覚えのある人が立っている。



「……中村先生?」



私を呼んだのは、体育の先生の中村先生だった。
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