恋のかけら
5 ❉ * *
今日中に家庭科の提出物を出さなければならなかった。だが、制作に入る始めの授業の時、杏は運悪く風邪を引いて欠席をし、他の生徒より取り掛かるのが遅れてしまった。それで、授業時間内に提出が間に合わなかった杏は、放課後に居残りをするはめとなった。
やっと提出をして教室に戻った時には教室には誰もいなかった。
遅くなっちゃったな。
ガランとした教室の席に着き、疲れた顔をして帰り支度を始めた。
机の横に掛けていた補助バッグを取ろうとして落とし、そのポケットから生徒手帳が出た。バッグと手帳を拾う。その手帳からは紺色の紙がはみ出している。杏はその紙を広げて見た。
そこには
[名前 浅野智明 志望校 杉山高校]
と書いてある。
やっぱ頭良いなぁ…。続いてた縁もこれで終わりだね。
「それ、なんで佐倉が見てんの?」
その声に横を向くと智明がいた。
杏は驚いて、金魚の様に口をパクパクさせた。そして顔を赤くして、
「や、違うんだよ? これは、あー…えっと…」
杏は慌てて両手を開いて智明に向け、左右に振った。
「……。(もしかして…)」
杏の様子を見て、智明の顔が徐々に赤くなってゆく。
うわぁ〰〰っ、やっぱ確信してしまったぁー!! この不安定な気持ちがなんなのか…。
《 なんだか、この縁はこの先もまだ続きそうな予感がする。 》
End♡