危ナイ隣人
1.
懐カシイ香り
ふわりと夏の生ぬるい風に乗って届いた匂いが、遠い記憶をくすぐった。
少しの哀しみをはらんで懐かしさを感じさせた香りに、思わず振り向いてみたけれど、──
「じゃあ、荷物はこれで全部ですね! ありがとうございました!」
そこは、動物のロゴが有名な某大手引っ越し業者の制服を着た若い男の人が2人いるだけ。今日初めて会った、懐かしさなんかとは無縁の人達だ。
気のせい、か……。
帰っていく制服姿の2人の背中にお礼を言って、軽く頭を下げる。
記憶を引っ掻いたさっきの匂いはもうしなくて、私はぽりぽりと頬を掻きながら視線を戻した。
駅から徒歩10分のところにある、1DKの6階建てマンション。
そのうちの4階、廊下を真っ直ぐ歩いた突き当たりの404号室。
今日からここが、私──御山 茜のお城!
わくわくと躍る気持ちを抑えつつ、黒い扉についたドアノブを引いた。
中はずどーんと廊下が続いていて、両脇には大量の段ボールが積み上がっている。
段ボールに描かれた某パンダとばっちり目が合って、思わず「うへぇ」なんて力のない声が出た。
少しの哀しみをはらんで懐かしさを感じさせた香りに、思わず振り向いてみたけれど、──
「じゃあ、荷物はこれで全部ですね! ありがとうございました!」
そこは、動物のロゴが有名な某大手引っ越し業者の制服を着た若い男の人が2人いるだけ。今日初めて会った、懐かしさなんかとは無縁の人達だ。
気のせい、か……。
帰っていく制服姿の2人の背中にお礼を言って、軽く頭を下げる。
記憶を引っ掻いたさっきの匂いはもうしなくて、私はぽりぽりと頬を掻きながら視線を戻した。
駅から徒歩10分のところにある、1DKの6階建てマンション。
そのうちの4階、廊下を真っ直ぐ歩いた突き当たりの404号室。
今日からここが、私──御山 茜のお城!
わくわくと躍る気持ちを抑えつつ、黒い扉についたドアノブを引いた。
中はずどーんと廊下が続いていて、両脇には大量の段ボールが積み上がっている。
段ボールに描かれた某パンダとばっちり目が合って、思わず「うへぇ」なんて力のない声が出た。