危ナイ隣人
「……そんな期待されるほどおもしろい話じゃないから」


「今の時点で十分おもしろ……いや、べつにおもしろそうだから聞きたいわけじゃなくてね、」


「そこまで言ったなら最後まで言うのと同じじゃない?」



ジト目で見られても、真帆には効かないと思うなー……って、やっぱり。笑ってる。



「諦めなよ塚田くん。1対4じゃ勝ち目ないよぉ」


「中居さんまで……」



逃げ切れないと悟ったのか、吐かれた溜め息は深く長い。


それから、観念したように視線を上げた塚田くんだけど、すぐに逸らされた。



「中学の頃……日曜日で、家に俺以外誰もいなくて」


「うんうん」


「チッキンラーメン作ろうと思ったはいいけど、お湯を入れたタイミングで近所の人が訪ねてきて」


「対応してるうちに3分経っちゃってたの?」



何となく予想できた結末を先回りして問いかけると、少し驚いた様子を見せてから、塚田くんは頷いた。


……のも束の間、近藤が首を振る。



「俺が知ってるのはそんな話じゃなかったぞー」



さっきの仕返しと言わんばかりに、近藤から横槍が入る。


平常時は涼しげな目が鋭い光を宿して、したり顔の親友に向けられた。

本気で怒ってるわけではなさそうだけど……塚田くんって、こんな顔もするんだなぁ。新発見だ。
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