危ナイ隣人
「3分経つ前に戻れはしたんだけど……どうしても、たまごが食べたくて」


「たまご……?」


「って、蓋したら固まるってアレ?」


「……そう。でも俺、蓋するって知らなくて」


「え」


「部屋に戻って、完成間近のチッキンラーメンにたまご入れて、固まるはずのないたまごが固まるのを待ってるうちに麺がお湯を吸って、」



絞り出すような低音を、堪え切れなくなった3人分の笑い声が遮ってしまった。

3人って言うのは、もちろん私と真帆とくるみ。


そんな私達を前に、塚田くんが顔をしかめる。



「だから言いたくなかったんだよ……」


「あははっ、ごめん! 塚田くんがそんなドジするなんて意外だったんだもん〜」


「言っとくけど、中学の頃だから。同じ轍は二度と踏まない」


「この轍を二度も踏んだらびっくりだよ」



側から見ればクールな塚田くんの新しい一面を垣間見れたことで、少し打ち解けられたような和やかな空気になる。


笑いが起こる楽しい空気のまま、準備は進んでいった。




完成したお鍋を、みんなでつつく。


初めは具材をとる用のお箸を使ってたけど、誰かが自分のお箸を使っちゃったことで、もういいや! って諦めた。

幸い、誰1人としてそれが嫌だって人はいなかったから助かったんだよね。
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