危ナイ隣人
電話でもしてるのかなと思ったけど、騒がしさが収まる気配はない。

そもそも、お隣さんはこんなふうに騒がしく話すようなキャラでもないし。


うーん……。



「ちょっと、様子見てくるね」


「え」



私がキッチンを出ようとすると、ワンテンポ遅れて腕を引かれた。


予想外のことに驚いて振り向くと、引いた彼もまた、びっくりしたように手を離す。



「ごめん、つい」


「ううん。どうしたの?」


「いや……1人で行くなんて危ないんじゃないかと思って」



あぁ、なるほど。

なんだか騒がしいところに1人で行こうなんて、そりゃ心配もするよね。



「ありがとう。でも、大丈夫だよ。お隣さんだと思うし、見知った仲だから」



402号室の住人に会ったことはないけれど、角部屋の404号室にまで声が届くはずがない。


大丈夫だよ、ともう一度念を押して、今度こそリビングを出た。



廊下を歩いて、玄関が近づくほどに騒がしさへの距離も詰まる。


低い声が複数と、金属音と、それから……

ソプラノのような高い声を認識したのと、玄関の扉を開いたのはほぼ同時だった。


ぐっと息が詰まったような気がしたけど、今更引き返すこともできなくて、扉の陰から様子を伺う。


──と、403号室の前にぐったり寄り掛かるナオくんの姿が見えた。

周りを取り囲む男の人が3人と、ナオくんの傍に座り込んで心配そうに顔を覗き込む女の人が1人。
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