危ナイ隣人
ドアの音で私の存在に気付いたのか、そのうちの1人の男の人がこちらを向いた。

ナオくんに負けず劣らず、がっちりした体格の人。

髪はちょっとふわふわで、優しそうな雰囲気だ。



「すみません、うるさかったですよね」



その人がこっちに向かって軽く頭を下げて、他の人も私が顔を出していることに気付いたみたい。

一斉に視線が向けられて、慌てて首を振った。



「文句言いに来たわけじゃないので。ていうか、どうしたんですか、ナ……真木さん」



制服姿の私が、友達らしき人達の前で「ナオくん」なんて呼んだらマズいかと思って、慌てて言い直した。


JKがどうとか言ってたし、何より、何もなければただの隣人だった私達だ。

変に親しげな呼び方をして、あることないこと勘繰られでもしたらナオくんがかわいそうだ。

当の本人はぐったりしてるけど。


武士の情けだよ! 貸しイチだからね!



「酔い潰れてるだけなんで適当に転がしとけば大丈夫です。……けど、コイツの家の鍵が見当たらなくて」


「ダメだ、やっぱりない」



女の人とは反対側の傍にしゃがみ込んでいた男の人が顔を上げる。

その手元には、メンズブランドのロゴがあしらわれた黒くて小さいトートバッグ。


部屋に転がってるのを見たことがあるから……たぶん、ナオくんのやつだろうな。

鍵を探したけど、入ってないってことか……。
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