危ナイ隣人
「御山さん。お隣さんだろ」


「みや……ま……」



虚ろな目で、私の名字をもごもご口に含むように呟いたナオくん。


思わず“茜”って言わなくてよかったって思ったけど……そもそも私って認識してないパターンもありえるなぁ。

っていうか、絶対そう。制服だけで判断し顔見えてないんじゃないかな、この酔っ払い。



「真木、玄関開けるぞー」


「つーか、弱いくせになんで酒飲んだんだよ。チューハイ2杯でこんなんになるヤツ見たことねぇよ」



ふわふわ髪じゃない男の人2人もまた、中々のガタイの良さだ。


揃いも揃って体格いいし、同じ職場の人かなぁ。

女の人は……あんまり消防士さんっぽくないな。手足細いし。



っていうか……え?



「それだけしか飲んでないのに、こんなになってるんですか? この人」


「あはは、やっぱそう思うよね。こんなナリして、すっごい下戸なんだよ」


「ほろ●い1本が限度のくせして、2杯目頼むとかアホだろコイツ」



片膝立てたナオくんの足を足蹴にして、1人の男の人が笑う。


あ、八重歯。

そう思ったのと同時に視線が絡んで……再び八重歯が姿を見せる。



「真木の隣にこんな可愛い子が住んでるって、聞いてないんだけどー。なぁ、九重(ここのえ)


中川(なかがわ)さん、女子高生を口説こうとしないでください」


「いやー、ちょっといないレベルじゃん? 本郷(ほんごう)は聞いてた?」
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