危ナイ隣人
「ちょっと。美奈(みな)がいる前で俺に振らないでくださいよ」



本郷と呼ばれ、答えたのはふわふわ髪の人。

美奈というのは、たぶん、ぜったい、唯一の女の人のこと。


今の言い方からして……この2人が付き合ってる、ってことなのかな。

なーんだ、ナオくんのいい感じの(ヒト)とかじゃないんだ。つまんないの。


まぁでも、ナオくんにカノジョなんかいないか。

本人も言ってたけど、レンアイカンってやつが中々テキトーだもん。



「ごめんね、御山さん。この人、女の子大好きなんだ。気にしないで」


「可愛い女の子限定だけどな〜」


「中川さんちょっと黙っててください」



九重と呼ばれた人にあしらわれて、中川さんは不服そうだ。


さん付けで呼ばれてるし、本人は他の2人のことを呼び捨てだし、一番年上とかなのかな。

慣れたあしらい方を見るに、この人はいつもこの調子なんだろーな。



「じゃ、そろそろ私戻りますね」


「あ、うん。ありがとう、助かりました」


「いえいえ。じゃ、失礼します」



ニコッと笑いかけてから、ナオくん達に背を向ける。


一歩を踏み出そうとしたところで──404号室、つまり、うちの扉が開いた。



え……?

びっくりして足を止めると、黒い扉の陰でサラサラの黒髪が揺れる。



「塚田くん。どうしたの?」


「なかなか戻ってこないから気になって。……大丈夫なの」



塚田くんの焦点が、私の背後に移された。
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