危ナイ隣人
音に驚いたのか、先に靴を脱いで上がり框に登っていた塚田くんが振り返った。



「どうしたの、そんなに慌てて」


「な……なんでもない」



明かりの消えた廊下は薄暗くて、お互いの顔はよく見えない。


見えなくてよかった。

だって、自分でも今どんな顔してるかわかんない。



一瞬にして駆け足になった心臓の音が、私の頭のてっぺんからつま先までを支配していく。



気怠げなまぶたの奥の、射抜くような視線。

虚ろなのに、鋭い眼光。


ナオくんのあんな顔、初めて見た。



近藤とも塚田くんとも、学校にいる男子の誰とも違う。


普段ふざけてばかりだから忘れてた。



ナオくんはちゃんと、大人の男の人なんだ……。





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