危ナイ隣人
「ナオくんのこと、あまりに知らなすぎるしさぁ」


「そんなことねぇだろ」


「あるよ。私がナオくんについて知ってることといえば……」



年齢、24歳。職業、消防士。趣味、競馬。好きなもの、綺麗なおねーさん。好みのタイプ、ハンコッ●……。

口に出しながら指折り数えて、気付いてしまう。



「ダメだ、絞り出せば出すほどダメ人間に思えちゃう!」


「なんでだよって言いたいところだけど、我ながらひどいな俺」



机の上に置いてあったケースからタバコを1本取り出して、火をつけるナオくん。


あ、スモーカーってことも知ってる。これもあんまりよろしくないと思う。

健康に悪いし。体使う仕事なのに。



「そんなに俺のこと知りたいのか?」



口から煙を吐き出しながら、またナオくんが視線をこちらに向ける。

やる気の感じられない、いつもの目。


言ってることはあながち間違いではないのかもしれないけれど……改めてそう言われると、素直にうんって頷きたくない。

なんか悔しい。



「そんなんじゃないよ」



ほら、やっぱり私の口をついて出るのはこんな言葉だ。

カワイイ女の子だったら、迷いなくうんって言えるんだろうな。


私には到底できない芸当だ。



「強がるなって。そうだ、スリーサイズでも教えてやろうか?」


「ぎゃっ! いらないんですけどっ」
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