危ナイ隣人
クリスマスに、他のヒトと。

なんという修羅場……。


うるうる揺れる涙を瞳いっぱいに溜めて、グイッと顔が寄せられる。



「ここで出会ったのも何かの縁よ。茜ちゃん、直也と一緒にヤケ酒に付き合ってくれない?」


「バカ、何言ってんだ! 茜はまだ未成年だ!」


「え、そうなの? じゃあ直也、茜ちゃんのジュース買って来なさいよ」


「無茶言うな。さてはお前、既に酒入ってんだろ」



ナオくんの問いかけに、京香さんは何も言わずに笑みだけで答えた。

今初めて会った私でもわかる。答えはイエスだ。


見た目だけじゃ全然わかんないけどな。

下戸中の下戸であるナオくんとは大違いだなぁ。



「俺ら今からメシ食うんだよ。話、後日じゃダメなのか?」


「嫌よ。明日も明後日も仕事だし、愚痴を来年に持ち越したくないじゃない。それに、茜ちゃんと喋りたい」


「完全に目的がそっちになってんじゃねーか……」



先輩には敵わないのか、諦めた様子で頭の後ろをポリポリかくナオくん。


私もお邪魔なら帰ろうかなと思ったけど……これは帰れそうにないな。



「……茜。金やるから、近くのコンビニかスーパーでジュース買ってこい。スイーツとかも好きなだけ買っていいから」


「え。いいよ、お水あるし、ご飯作るのまだ途中だし……」


「いいから。飯は俺がやっとく」


「俺がって、出来るの?」


「当たり前だろ。俺を誰だと思ってんだ」



机の上に置いていた二つ折りのお財布の中から、千円札が2枚抜かれる。



「その間に、大人同士でしか出来ない話でもしとくからさ」


「と言いますと?」


「聞きたいか?」



コドモ扱いが悔しくて聞き返した私に、ナオくんがニヤリと悪い笑みを向けた。
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