危ナイ隣人
悔しいけど、それで怯んでしまう私はまだコドモだ。



「いらないしっ。なんかすっごいオッサンぽい!」


「お? 俺をオッサン呼ばわりすると、もれなく京香にもケンカふっかけてることになるぞ?」


「んなワケないでしょ! もう! 行ってきます!」



ナオくんの手から2千円を受け取って、私は慌ただしく403号室を飛び出した。





上着なんて持ってきてなかったので、ダウンジャケットを取りに一度404号室へ戻った。


12月の夜は一段と冷える。


いくらダウンがあったかいからといって、長時間外にいるのは嫌だ。

冷え性の私はすぐに手足の先がカチカチに凍って、再び解凍するのにけっこう苦労するんだ。



「早く帰ってこよっと」



マンションの敷地を出てぽつりと呟いた声は、一緒に吐き出した白い息と共に静かな夜の道に消えていく。





「ただいま戻りましたー」



リビングの扉を勢いよく開けると、エアコンで暖まった部屋の空気がじんわりと私を包んでくれた。


L字型のソファーに座っている2人がこちらを振り向き、出迎えてくれる。



「おかえり、茜ちゃん! 寒かったでしょう」


「それはもう。かなり重労働だったんで、普段高くて中々手が伸びないコンビニスイーツ買ってきました」


「人の金だと思って」



苦笑いするナオくんに、買ってきたスイーツを見せびらかす。


カップに入ったチョコケーキだ。自慢すると、ナオくんは更に呆れた顔。



「先にメシだろ。もう準備してあるから、早く手を洗ってこい」
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