危ナイ隣人
「特にこれといった根拠はないんですけど。私の中のオンナのカンが、そうだって」


「チチくさいガキが何言ってんだ」



350mlの缶をカン! とテーブルに置いて、私を指差してきたナオくんの顔はびっくりするくらい真っ赤だ。

なんなら耳まで赤い。



「茜の女の勘なんて、いってもDランクだろ。せめてBランクにまで上げてから語れ」


「……ランクとか、意味わかんないよ」



さてはかなり酔ってるな?

目を細めてナオくんを横目に見た私に、彼は不敵に笑いかける。



「あーあ、カワイソウになぁ。チチだったら堂々のAなのにな」


「なっ……!」


「せっかくならチチのほうでDまで上り詰めろよー」


「最低! セクハラだよ! ……って京香さん、笑ってないで助けてくださいよ!」



援護射撃を願ってみても、彼女はゲラゲラ笑うだけ。

お酒が入るとずっと笑っちゃう人なのか、さっきからずーっと笑いっぱなし。


ダメだ使い物にならない!



「普段からモテるアピールされてて、突然こんな綺麗な人現れたら、そりゃ疑いたくもなるよ!」


「きゃー、聞いた? 綺麗な人ですって。あーもう茜ちゃんカワイイ妹にしたい」



隣に座っていた京香さんに、頭からすっぽり抱き締められる。


わ、なんかいい匂いする。上品な香水の香り。

それ以上にお酒くさいけど……。



「茜、あんまり言うのやめとけ。コイツな、化粧落としたらまるで別人だぞ」


「あらやだ、寝言が聞こえるわ」


「いってぇ!」



ナオくんが突然顔を歪めた。

不思議に思ってテーブルの下を覗き込んでみると、ナオくんの足元に何かの小さい瓶が転がっている。


ラベルをよく見ると……英語でウイスキーって書いてあった。


勢いはなかったのか、カーペットが緩和してくれたのか、あんまり大きな音がしなかったからわかんなかった……。
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