危ナイ隣人
「あ、いや……」



なんでもないよってかわそうとしても、くるみの目はごまかされてくれないだろうなぁ。


油断した自分に呆れつつ、ペンを置いて身を乗り出すくるみの姿に諦める。



「車で、迎えに来てくれるんだって」


「誰が?」


「……例の、お隣さん」



私が言うと、くるみの目がキラーンと光った。


この後くるみの口から発せられる言葉を、予想できてしまう。



「学校にってことだよね!? 私も会いたい! 一目拝みたい!」


「拝みたいって」



前にうちに来た時、くるみはナオくんを見れずじまいだった。


隣人だし顔を合わせるチャンスはまたあるよーって言ってたけど、まさかマンションの外で叶うなんて。



「隣人?」



不思議そうに首を傾げたのは近藤だった。


そういえば、近藤には話したことなかったな。



「うちのマンションのね。一人暮らしだし、何かとお世話になってんだ」


「茜によると、かなりのイケメンらしいよ!」


「へぇ、この御山が言うなんてよっぽどなんだな」


「なんで私基準だとそうなるの」



完全に集中力が切れたらしいくるみは、いそいそと勉強道具を鞄の中にしまい始める。


真帆もひと段落ついたらしくスマホをチェックしてるし、今日の勉強会はどうやらここまでみたいだ。



「お隣さんって、この前の?」



教科書を閉じたところで、塚田くんが私に声をかけてくる。


この前の? と目を瞬かせると、「鍋パの時、部屋の外で」と追加情報をくれた。
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