危ナイ隣人
「イケメンならなんでもいいんだと思っててゴメン」


「え〜そんなふうに思ってたの? さすがの私だって見境なくってわけじゃないよっ」


「それは失礼しました。ところでくるみさん、テスト結果はどうでした?」


「えっ、この流れで聞く!?」


「この流れってか、今聞かないと忘れちゃいそうだから」



今度は私がニコニコ笑顔を向けてやる。

ビクッと肩を跳ね上がらせた時点で大体の予想はつくけど、先生を請け負った身としてはちゃんと最後まで見届けないと。



「言っておくけど……これでも結構頑張ったんだよ?」



しおらしい前置きの後、手渡された用紙。

そこに記されていた順位に、私は目を見張った。



「かなり上がってんじゃん! 今の言い方だと、ボロボロだったのかと……」


「だって、茜みたいに劇的によくなったわけじゃないんだもん」


「バカ、比べるなら自分とだけにしときなよ」


「あかねぇ〜!」



ギュッと抱きついてきたくるみを受け止めた時、喧騒の隙間を縫って聞こえてきた、サイレンの音。


それは、遠くから近付いて、また遠のいていった。



「…………」



ポケットの中のスマホは震えない。

きっと、既読だってついてない。



どこかを駆け抜けていった赤い正義に彼が乗っていたかどうかはわからないけれど、もし乗っていたのなら、どうか、無事に帰ってきてほしい。
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