危ナイ隣人
「そう、なんですか……」
昔の話をあまりしたがらないのは、何となく空気で感じてた。
だけどそれは、相手が私だからだと思ってた。
まさか、長年の付き合いの本郷さんにも多くを語っていなかっただなんて。
「でも……だからって、どうして私に?」
隣人で顔見知りだという程度の認識は、ナオくんのピンチを報せる理由としてはあまりに弱い。
あの時、私はナオくんのことを“真木さん”って呼んだはずだし、特別深い関係には見えなかったはずだ。
私の考えが読めたのか、本郷さんは険しかった表情を少しだけ緩めた。
「鍵だよ」
「え……?」
「直也が酔っ払って鍵を失くした時、家の前で拾ったって言って直也んちの鍵を渡してくれたでしょ?」
首を少し傾げた本郷さんに、私は顎を引いて返事をする。
ナオくんから預かっていた合鍵を、とっさに嘘ついて渡したんだ。
「あの時、おかしいと思ったんだよね。普段、鍵は全部キーケースに付けてる直也がさ、家の鍵だけを落とすなんて」
「あ……」
「直也の鞄の中に鍵の外れたキーケースがあったわけでもないし、これはもしかしてって」
もしかしてって……もしかして、変な勘違いされてる!?
いや、たぶん推理は合ってるんだけど!
「あの、べつに私達はそんな、トクベツな関係とかじゃなくて」
昔の話をあまりしたがらないのは、何となく空気で感じてた。
だけどそれは、相手が私だからだと思ってた。
まさか、長年の付き合いの本郷さんにも多くを語っていなかっただなんて。
「でも……だからって、どうして私に?」
隣人で顔見知りだという程度の認識は、ナオくんのピンチを報せる理由としてはあまりに弱い。
あの時、私はナオくんのことを“真木さん”って呼んだはずだし、特別深い関係には見えなかったはずだ。
私の考えが読めたのか、本郷さんは険しかった表情を少しだけ緩めた。
「鍵だよ」
「え……?」
「直也が酔っ払って鍵を失くした時、家の前で拾ったって言って直也んちの鍵を渡してくれたでしょ?」
首を少し傾げた本郷さんに、私は顎を引いて返事をする。
ナオくんから預かっていた合鍵を、とっさに嘘ついて渡したんだ。
「あの時、おかしいと思ったんだよね。普段、鍵は全部キーケースに付けてる直也がさ、家の鍵だけを落とすなんて」
「あ……」
「直也の鞄の中に鍵の外れたキーケースがあったわけでもないし、これはもしかしてって」
もしかしてって……もしかして、変な勘違いされてる!?
いや、たぶん推理は合ってるんだけど!
「あの、べつに私達はそんな、トクベツな関係とかじゃなくて」