危ナイ隣人
トクベツな関係、と言ったところで、なぜだか胸がキュッとなった。



「引っ越してきたばっかりの時に、私がちょっとやらかしちゃって……その時に、ナオくんが助けてくれて」


「うん」


「ちょっとの間お世話になって、それが終わってからも、ナオくんちでたまに一緒にご飯食べる約束をして……いちいち玄関に行くのがめんどくさいって言うから、鍵を渡してくれて」


「ははっ、直也らしい理由だ」


「出不精にも程があるって感じですよね。でも、だから」



ただ、それだけの関係なんです。

語尾に付け足した声は、少し震えた。



403号室で食べるご飯は美味しかった。

1人で食べるご飯の味が、霞んでしまうこともあった。

外から見ればちっぽけな空間なのかもしれないけれど、403号室のリビングは私にとって大きな世界に思えた。


ナオくんと過ごす穏やかでバカみたいなあの時間が、いつの間にか、大切な存在になっていたんだ。



「茜ちゃ──」


「真木直也さんの関係者の方ですか?」



本郷さんの言葉を遮るようにして、第3の声が辺りに響いた。


いつの間にか地面に落ちていた視線を上げると、医療ドラマなんかでよく見る白衣を着た女性が立っていた。


声に詰まった私の代わりに、すかさず本郷さんが応える。
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