危ナイ隣人
「あの、真木は」



本郷さんに一歩詰め寄られても、慣れたことなのか、医師らしき女性は顔色一つ変えずに口を開いた。



「精密検査をしましたが、衝撃による脳内出血も見られませんでしたし、大きな外傷もありませんでした」


「あ……」


「脳震盪でしょうね。命に別状はありませんよ」



淡々と述べられたナオくんの状態に、本郷さんがホッと息を吐いたのがわかった。



「面会可能ですが、入られますか?」


「あ……はい!」


「ご案内しますね」



白衣の裾をなびかせて、大きな扉の横に備え付けられた機械に、首から下げていたカードをかざした先生。

すぐに扉は自動で開いて、その先はこれまたドラマでよく見る非現実な世界が広がっていた。


先生の後をついていく本郷さんの背中を、慌てて追う。


いくつかのベッドを通り過ぎた後、カーテンで仕切られた一画の前で先生は足を止めた。



「ナオ、くん」



ベッドの上に横たわるナオくんは、相変わらず、むかつくほど綺麗な顔をしていた。


その頬には、痛々しく大きなガーゼが貼られていたけれど。



「じきに目を覚まされると思いますよ」



そう言った先生は本郷さんと何やら言葉を交わしたあと、一画を仕切るカーテンを完全に締め切って、どこかへ行ってしまった。



「大きな怪我もなさそうでよかった……。いっそ腹立つくらい健やかに眠ってるね、直也のヤツ」


「……はい」


「……俺、先に職場に連絡入れてくるね。班のみんな、心配してると思うから」
< 170 / 437 >

この作品をシェア

pagetop