危ナイ隣人
絶望の色を浮かべたナオくんはお構いなしに、ひらひら手を振って出て行こうとする本郷さん。


 
私も一緒に出なきゃ……!



「待って、私も帰ります! ナオくん、お大事にっ」



ベッドに横たわったままのナオくんに視線を向けることなく、慌てて本郷さんの背中を追った。


ほんとはもっとちゃんとバイバイすべきだったのかもしれないけど、突然私の中にやってきた恋心がそれを阻んだんだ。


さっきは本郷さんがナイスタイミングで帰ってきてくれたからよかったけど、2人きりになったら、ぜったい普通でいられなかったもん……。



初めての恋なのに、相手は絵に描いたようなダメ人間だし、気付いた時点で失恋確定だし。


恋ってもっと甘いものなんじゃないの?

胸がキュンってなったりドキってなったりするんじゃなかったの?

なんでこんなに、気持ちはズンってしてるしやっちまった感満載なのに……恋だって確信だけはあるんだろう。

女としてのランクはDらしいんだけどなぁ……。


気のせいだとか間違いだとか、ごまかせないことが苦しいくらいもどかしいよ。



職場に戻るという本郷さんと病院のエントランスで別れて、私は帰路についた。





家に帰って晩ご飯を作っている間も、湯船に浸かっている時も、ベッドに入ってからも、心はナオくんに支配されていた。
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