危ナイ隣人
何をするにも、ナオくんが思い浮かんだの。

自分らしくない自分に嫌気がさすのに、どう頑張っても消えてくれなくて。


胸の中にずっと靄がかかったような感覚に、その日は遅くまで寝付けなかった。





「おはよー、茜。今日の放課後、暇なら映画見に行かない?」



まぶたの重い朝、教室に入ると1番に真帆が声をかけてきた。



「おはよう。何の映画?」



鞄から教科書を取り出しながら問いかけると、よくCMで流れている映画のタイトルが返ってきた。


少女漫画が原作の、人気若手女優が主演を務める恋愛映画だ。



「なんか、珍しいね? 真帆が恋愛モノなんて」


「そう?」


「うん。渋い映画が多いイメージ」


「あー、まぁ確かにね。イケオジ求めたらそうなるんだもん」


「なるほど。内容と同じくらいキャスト見てるんだもんね」



恋愛映画かぁ。

 
なんていうか……タイムリーだなぁ……。



「あら、乗り気じゃない?」


「え? あ、いや……そういうわけじゃないんだけど」



歯切れの悪い返答しかできなくて、真帆が首を傾げる。



行きたい気持ちはある。
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