危ナイ隣人
でも、仮にもす……好きなヒト、が入院してるこの状況で、のこのこ遊びに行ってもいいのかとか考えちゃって。

中学からの付き合いの真帆よりナオくんを優先させるのか! って言われたら反論できないんだけど……でも、どうしたってブレーキがかかっちゃう。



「ごめん、今日はやめとく。来週なら行けると思うから、その時まだ見てなかったら一緒に行こ」


「オッケー、来週ね。私も急ぎじゃないから、来週行こ!」


「ありがと、楽しみにしてるよ」



真帆からの誘いは断ったけど、病院に行くわけじゃない。

昨日は特殊な状況で私に連絡が入ったけど、本来なら私はあの場所にナオくんがいることすら知らなかったワケで。

入院するナオくんのところに足繁く通う資格なんて、私は持ってない。



……ここで、うだうだ考えてないで会いに行けるような勢いがあったら、可愛いんだろうけどなぁ。





──なーんて思っていたのに、なんで私はここにいるのでしょう。



「おい京香。離れろ、暑苦しい」


「何よぉ。あんたに引っ付いてるわけじゃないんだから黙ってなさいよ」



……えーっと?



「本人がびっくりして固まってるから代わりに言ってやったんだ俺は。茜の顔見てみろ」


「えー?」



京香さんに顔を覗き込まれて、はっと我に返る。

と、ブラウンのアイシャドウが乗せられた京香さんと目が合った。


なんでアイシャドウの色までわかるかって?

だってそれは、ソーシャルディスタンスがそこにないから。
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