危ナイ隣人
「そうだよ。ご褒美の約束、忘れてないよね?」


「え、何なに、おもしろそうな匂いがする」


「この前の実力テストで、学年10位以内に入ったらご褒美くれるってナオくんと約束したんです」



説明すると、興味深そうに杏果さんが「へぇ」と声をあげる。



「何買ってもらうの? この際だから、デパコスとかブランド物とか、うんと高いやつ選んじゃいなよ」


「そういえば、ブランドもののバッグまでなら可って前に言ってました」


「あら、やるじゃん消防士。私にも、エ●メスのバッグ、プレゼントしてよ」


「寝言は寝て言え」



京香さんを一蹴しつつ、ナオくんがこちらに向ける瞳は揺るぎない。



「約束は約束だからな。何が欲しいんだ?」



さほど興味もなさそうに聞くナオくんだけど、たぶん、ご褒美を与えることになるってわかってた。


ご飯を食べた後、なおくんちのリビングでテキストを開くことがあったけど、私がつまずくたびに助け舟を出してくれた。

ナオくんってば、数学だけじゃなくて他の教科も簡単に解いてたの。

俺が教えたんだから10位以内なんか楽勝だよな、とか言いながら。


その通りになったよ。

ナオくんの力を借りなきゃ10位以内なんてとれなかったかもしれないことが、ちょっと悔しいけれど。



「ほら、言ってみろ。財布が悲鳴上げる覚悟は出来てるぞ」


「物なんていらないよ」


「……え?」


「物はいらないけど、連れて行ってほしいところがあるの」
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