危ナイ隣人
「当日の朝まで仕事なんだっけ? 向こう」



深い緑色のニットから伸びた手をテーブルの真ん中に寄越しながら、真帆が訪ねてくる。


3人で囲んだテーブルの真ん中には、くるみが焼いてきてくれたプレーンとチョコレートのクッキーと、真帆が買ってきてくれたカラフルなマカロンが並んでいる。

真帆がつまんだのは、マーブル模様のクッキーだった。



「そうなの。朝の9時すぎくらいに帰ってきて、それからちょっと仮眠とるってさ」


「消防士さんなんだっけ?」


「うん、そう。正確には、救助隊ってとこにいるらしいよ」


「へぇ。よくわかんないけど、大変そうだねぇ」



くるみがマカロンを手に取りながら、感心したように言う。


ラズベリーのマカロン。似合うなぁ。



「仕事にだけは真面目だからね、あの人。ケガからすぐに復帰できてよかったよ」



退院したナオくんは、すぐに職場に復帰した。

1日だけ完全に内勤業務の日を挟んで、次からはもう訓練や現場に出たらしい。



「お兄さんの命日に、休み入れてくれたんでしょ? 顔だけじゃなくて、中身もかっこいいよね〜」


「アハハ、そうだねー」


「えー、何その棒読み!」



プンスカ怒るくるみに、苦笑いしか返せない。


なんだかんだ言いながらも、ちゃんと休みを入れてくれたことは本当に感謝してるけど……中身って一括りにしちゃうと、ねぇ?


知らない方が幸せってこともあるから、あえて言いませんけども。
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