危ナイ隣人
心臓の音が少し駆け足になったのを感じながら、ごまかすように首を小さく振る。



「ううん。お仕事お疲れ様」



家に鍵をかけて、どちらからともなく歩き出す。



……なんだろう、変な感じ。

意識しないって、今日はあんまり気を張ってないからかな。

それとも、家の外で並んで歩いてるからかな。


ナオくんが歩く左側に、血管がぜんぶ移っちゃったみたいだよ。



「腹減った」


「もうお昼だもんね。何も食べてないの?」


「あぁ。コーヒー飲んだだけ」



立体駐車場を抜けて、ナオくんの車に乗り込む。


シートベルトを閉めたところで、私のお腹も空腹を知らせた。



「適当にどこかで食べてから向かおっか」


「そうだな。ついでに花屋も寄ってくだろ?」


「うん、お願いします」



ほんとは、朝、時間があるからお花買いに行こうと思ってたんだけど。

支度とか家事をしてるうちに微妙な時間になっちゃって、ナオくんがいつ来てくれるかもわかんなかったから、行けなかったんだよね。


お花持ってないこと、気付いてくれてたんだ……。



「んじゃ、出るぞ。……とりあえず〇〇市のほう向かえばいいんだよな?」


「うん。〇〇市の、ちょうど反対側の山の上にあるの」


「確かに、JK1人で行くにはキツいわな」



そうなんです。

距離はそんなに遠くないとはいえ、車持ってない人には優しくないところなんです。



「つーか今日、天気いいな。結構肌寒いのに」


「朝のニュースで、今日は冷えるって言ってたけど、日差しは眩しいよね」


「ほんとな。目ェ覚めるわ」
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